このSUB-1の心臓部はピエゾエレクトリックを更に応用して考案されています。これは非常にユニークな方法が取られているんですよ。勿論私のオリジナルデザインで、他では取られていない方法でしょう。『本物のスタンドアップ(アップライトベース)と張り合う程のWOODからのBESTなナチュラルサウンドを得るには同時にBODYトップの振動形態が同じようにバイブレートしなくては!』 着眼したのはそこです。
ブリッジ部分の足が支えられているのはBODYから宙に浮かされた状態(逆に考えればBODYは吊り下げられていますが)で同じだけ弦からの圧力が掛かった2つのTONEバーによってです。
アルコ(弓弾き)の時と、かき鳴らすPLAYではブリッジ部は全く違う動きをするのでボリュームやレンジもかなり違う訳なのですが、この構造によって再現可能になった訳です。(アルコは弓で擦るので非常に細かい振動から大きい振動まで非常にレンジが広い)
そしてTONEバーがそれらの動作を忠実にPICKUPに伝えます。大変に自然なサウンドはその構造によってクリエイトされるんですよ。BODYとNECKが持っている数カ所のチェンバーもまた、サウンドがより鳴り響くために共鳴BOXとして大きく寄与しています。
2001.4.4 John Carruthers
FREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCHの深野真社長からSUB-1の構造について非常に貴重なコメントを頂きました。
深野:まず非常にユニークな点はブリッジを支えている2本のTONEバーなのですが、これはBODYに対して宙ぶらりん(フローティング)の状態に取り受けられています。 そして弦を張ってチューニングしていくと、圧力が掛かりBODYに押し付けられますが、間にゴムを介して取り付けられているので、直接BODYには触れていません。 そしてその下にピエゾのPUがあるのです。という事はブリッジの振動を直接に他の部分に干渉されずに直接センサー部分に伝えられる構造になっているのだと考えられます。
銀:では通常のピエゾPUの設置構造を分かりやすく説明して頂けますか?
深野:ブリッジのサドルの下に敷いたり、トップ板に張りつけたり、いろんな種類がありますが、そのほとんどの物が、振動するその物に直接取り付けて音を拾う仕組みになっています。張りつけタイプはコンタクトピックアップとも呼ばれていて、ピエゾ素子と振動体を接着するための素材が音にも大きく影響します。
銀:弦を張り替える時にブリッジがポロっと落ちてしまうと良く見えますよね。アルミ色の板状のものや、網を編んだようなリボン状のものが多くみられますね。あの形が多いですよね。
深野:そうですね。非常にレンジが広いんです。ですが、カラザースのSUB-1の物は、何と少し固めのゴムで出来ているんです。ブリッジが乗っている部分が木で出来ていてブリッジの動きを忠実に伝える為にゴムのパッキンでBODYとは隔離されています。そしてそれが振動するとピエゾクリスタルに伝えられる。でもここで面白いのは、センサーがゴムなんですよ。これが意味するのは、柔らかい振動伝達物を使うことによって、高域の複雑な倍音をやや押さえ、低い周波数帯の基本波を良く拾える仕組みになっています。このゴムの素材、厚みや硬さがポイントですね。恐らくピエゾ特有の『ビャリーン』という耳に痛い高域を避けるためだと考えて良いでしょう。
銀:エレアコ特有の『ジャキーン』というクリップしたあれですね。
深野:痛いでしょ? 不自然だし、歪んでしまうし。ウッドベースの音を再現する為にはあの音域は必要無かった為では無いのでしょうか?
では高域はどうしているかというと、NECKやBODYの表面を這ってBODYから直接伝わる振動とBODYのホローチェンバー部分での共鳴を取り出しているんです。 高域の倍音成分のコントロールにおいて重要になってくるはその塗膜です。良く気を付けて見るとSUB-1は割に厚めの塗装が噴かれています。
カラザースでは珍しいことです。通常高域の成分はBODYの表面を伝わる為に塗装というのは非常に生音の最終的な音を決定する要素なのですが、例えば軽過ぎるバスウッドやライトアッシュのBODYーにはウレタン等の少し厚めな塗装の方が音が落ち着くのと一緒ですね。薄く固すぎる塗装は音が散ってしまいますから。
銀:一昔前には何でもラッカー塗装が最高という風潮がありましたけれど、最近のギタービルダーはむしろ塗装を使いこなしていて、もっとポジティブに塗装によって音決めしているとか、出したい音によって塗装を使い分けている感じがありますよね。タイラーなんかはあの軽いマミオ材に厚めの塗装ですよね。フェンダーのマスタービルダーの中にもそう言ったコメントをしている人がいますよね。
深野:そうなんですよ。タイラーも非常にその辺りが分かっているビルダーですよね。あのスカスカのマミオ材には絶対薄い塗装は向かないと思いますよ。音がばらけてしまうと思いますよ。だから塗装で最終的な音を仕上げているんです。要するにトータルバランスが大事ですよね。カラザースもその辺りを分かっていて、わざと厚い塗装を噴いているんではないでしょうか?
SUB-1は、BODYがアルダーのホロウ構造のBODYで出来ています。そして音源はカスタムメイドのピエゾピックアップをオリジナルな特殊なマウント方法とプリアンプで作っていますが、ある意味カラザースらしからぬ、やや厚めのウレタン塗装は積極的にトーンをコントロールするために吹かれたものであるような気がします。すべてはトータルバランスで決まりますが、SUB-1がLMだけでなく、クラシックや管弦楽のプレーヤーに受け入れられ、使われている事実はカラザースのサウンドメイキングにおける深い洞察を感じますね。百聞は一聴にしかず!これすごいっす!
いつもギター談議をさせて頂くフリーダムの深野さん。この日も電話で2時間に渡る熱いトーク。話が尽きない! 他にもどんどん違う方向に話は展開していったのですが、それはまたいつの日かホームページのコラムとかで・・・。 また一緒に遊びましょうね。深野さん!
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