いつの時代も、このオーバードライブやディストーション類は実に様々な製品で賑わってきました。音楽スタイルの発展に伴ってギターサウンドも多様化、また80年代の後半には、それまでのシンセやピアノ主体の楽曲からギターバンドが多く出てきた時期とも丁度重なって、この市場はここ20年程大変に活気があります。
数年前まではそれ自体で歪みを得られるものが主流でしたし、ハードロックが盛んだった90年代初頭には各社競って深い歪みを得られるものを市場に送りだしていた時期もありました。その後にブルース/ロックへの回帰や製品開発時には意図されなかった使い方等のアイデアも海外ミュージシャン情報から入手されると、もう一方でブースターという流派や活用方法にも焦点が当てられてきました。 特に有名なのはTS-808チューブスクリーマーのその後の使い方で、面白い事にターボオーバードライブが発売された80年代半ばには、TS-808は余りに歪まないので人気が無く、私が所属していた大学のジャズ研の部室にもずっとほったらかしになったものがあったと記憶しています。楽器店でも当時、大特価で山積みされていました。しかしスティーヴィー・レイ・ヴォーンを始めとしたギタリスト達がこぞってビンテージアンプのゲインアップの為にブースターとして使用したので、今日このTS-808は使用方法が再確認され、ヴィンテージ市場での人気は驚くほどのものとなっています。 70年代製の趣のあるブースターはさておき、90年代の半ば辺りからこのブースター系も色々と発展してきました。その中でもケンタウルス等は15年程前に発売されたにも関わらず、未だにベストセラーですよね。大変優れた物で長年愛用していたので、もし壊れたら困ると思い、私も常時2台持っていました。
その流れはアメリカ国内でも主流に成りつつあり、私が渡米していた2000年から2001年にかけてアメリカのハンドメイド工房を探索していた際にも、それまでのラック主体から、コンボアンプ/コンパクトエフェクターに回帰する流れが見られた時期で、あちらこちらのメーカーで実に様々なブースターが開発されていました。そして2002年辺りから日本国内でも多くが商品化、また輸入/紹介されました。
ブースターは一方で、かなり元の音に脚色を加える物もあり、そういった種類の場合、ギターやアンプだけでは気に入った音色が作れなくても、倍音を綺麗に付け加えてくれたり、細い音でも太い音の迫力のある音になってくれたりで結構楽しいものでした。皆さんもいっぱい試された事でしょう。
が、今回FULL MOON Co.が紹介するものは、それらの中でも特に洗練されたものと言えるでしょう。そういった意味ではこの種類の製品群はようやく成熟されてきたのだと考えさせられてしまいます。 ブースターというのは、これが結構原音を変えてしまうものなんですね。しかし、これは全くの“オーガニックブースター”と言えると思います。
音量の変化だけを行ない、音色へは“何も足さない、何も引かない”です。
トーンへの脚色も無く、良い音にもしてくれない“ただのつまらないブースター”なのです。私自身も弦を2ヶ月程張りっぱなしのLPで試奏した際、余りに音がヘロンヘロンの大きい音がしたので、ズッコケてしまいました。しかもちっとも上手に弾かせてくれないのでその日体調の悪い私は落ち込んでしまいました。
それともう一つ、著名ギタリスト達が見つけ出す前に押さえておきたい貴方にも是非オススメです。
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